本建築思想
成田完二の 勝手にコラム   耐震 005
 住宅建築に関する用語は、地域が変わると通じないことがある。
 高知県で耐震改修の講習会行っている際、愛知の講師陣が話す「戸箱」が伝わらなかった。
 戸箱とは雨戸を収納する箱で、全国的には「戸袋」のほうが通りが良い。
 
 また高知の人の言う「スレート瓦」が解らない。カラーベスト(製品名)のような平形スレートかと思ったら、「セメント瓦」だった。
 モルタルを瓦型に成型したもので、昭和40年前後に見た気がするが、この世界に入ってからは扱ったことが無い。しかし高知では、瓦が手に入れやすい愛知とは違い、セメント瓦が普及したようだ。
 当時の瓦、特に西日本では土葺きが主流で、粘土の少ない高知県では、葺き土の要らないセメント瓦が好都合だったのかもしれない。土壁の家が少ないのも高知の特徴だ。
 また宮崎でも砂地ばかりで粘土が無いので土壁の家は少なく、瓦も関東のように葺き土の無い桟瓦葺なのだ。

 地域が変われば、住宅の仕様も変わる。
 愛知県での耐震改修は、重い土葺きの瓦屋根と土壁との闘いである。
 土葺き、土壁の家を「本建築」と呼んでいて、それらの無い建物を下に見ていた時代があった。それが足かせになって改修が進まない。
 飛躍的に耐震改修を伸ばしている高知県とは好対照である。
 まだ重い屋根の方が、台風に有利との考えの家主さんが居て、葺き土を下ろすことに抵抗を示す。台風銀座の高知県や宮崎県に葺き土が無いのに、何の根拠でそれを言う。
 「本建築」思想が根強く残っているのか。そんなものとの闘いも強いられている。
全国商工新聞 2021.1
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