愛する建築が人を殺してはいけない。
建築は生命財産を守るものだと建築基準法にも書いてある。
耐震診断・耐震改修を行わない理由のトップは「面倒だから」。あんたの命だぜ。大事な休みにこんなことやっている俺たちの方が面倒だ。
昭和56年5月以前着工された木造住宅で、未だ耐震診断を受けていない家を一軒ずつ訪問して耐震診断を呼びかける「耐震診断ローラー作戦」。市の職員と地元町内の役員さん、私たち診断員がチームを作って回る。
十年以上掛けて数回DMが市から届いているはずである。なぜ耐震診断を受けないのか、回って解ることもある。建て替わっていたり、空き家になってるのは良い方。仲の悪い妹が家の所有者で、話していないとか。妹は地震で姉が死ねば良いと考えているに違いない。
「地震が来たら、家と一緒に死ぬでええわ」。
本当だな。ならば「救助不要」と書いた立て札を家の前に立てておいて欲しい。震災時に死にたい人を助ける手間が省ける。
昭和56年以前の木造住宅には耐震基準はあるものの、守る義務が無かった。衛生とか火事とか地域に影響する集団規定に重きが置かれ、家の構造などの単体規定は軽んじられていた。
それまではまだ戦後処理で、何でも良いから家を建てようということだったのだろう。そのため耐震性能の乏しい家が沢山できてしまった。それを税金で耐震診断して、市民の命を守ろうという取り組みなのだ。
あんたの命を守るためにここに来ている。頼むからそんな顔をせず、笑顔で耐震診断受けていただきたい。
全国商工新聞 2020.4
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