建築士は計算が苦手
成田完二の 勝手にコラム   その他 009
 建築士という人種は工学系でありながら概して計算が苦手らしい。ちょっとした計算式が出てくるだけでギブアップ気味になる。
 建築基準法が昭和25年に制定され、それと共に建築士も誕生した。建築基準法を守ることが主な使命である。当時は戦後復興が始まったばかり、放置すればスラム化してしまう。
 それを防ぐための法律で、建築士はその番人という立場に相違なかった。当時の大工達は講習を受けるだけで二級建築士の資格が与えられた。とにかく法を守らせることが重要であったのだろう。
 法律の方も遠慮がちだ。木造住宅の耐震基準は壁量基準という簡易な方法に置き換えられ、それを守れば合格である。
 その壁量基準だが、欠点がある。同じ法律に定めた構造計算基準に照らし合わせると75%ほどの耐震強度しかない。また、瓦下地の葺き土は想定されていない。
 つまり、土葺きの瓦屋根でお屋敷を造ると、壁量を満たしても耐震基準の半分ほどしか無い。

 令和の時代にこれでは良いないと国も気づいている。どうやら木造住宅も構造計算の義務化を検討しているらしい。
 一部の工務店やハウスメーカーはすでに構造計算の出来るソフトを導入しているが、零細な設計事務所にはその資金力は無い。安価なツールの出現は期待されるが、問題は計算が苦手な建築士達だ。ソフトの使いこなしには、使う側の基礎知識が無ければ危ういことになる。
 法律の方に遠慮が無くなった以上、建築士も甘えは許されない。そういう時代がやってくるということだ。試練の時かもしれない。
全国商工新聞 Aug. 2022
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