若い芽を育てよ
成田完二の 勝手にコラム   その他 008
 「先生、大学どこ?」。28歳開業と同時に講師を勤めた工業高校の生徒からの質問だ。
 大学名を答えると、「おお」と感嘆された。推薦で入ったので、そんな自覚は無い。
 思えば大学三年の新学期、製図室に集められ、
 「今年の入学生は合格点が上がり、もう君たちの入れる建築学科では無くなった」と教授のオコトバ。
 新入生のために掃除をするように言われ、不平を口々に製図板を磨かされた。そんな経緯で、工業高校からは、ハードルの高い大学になっていた。

 1980年代建築学科は花形だった。高度経済成長で大きく育った業界がその土壌だが、バブル崩壊からジリジリ後退し、気づけば中小の工務店は激減し、設計事務所も減った。地元大学の教授に尋ねると、最近は目指してくる学生はわずかで、偏差値で選ぶだけだから建築への情熱は無いと思った方が良い、と。ため息しか出ない。

 建築士会主催で学生向け設計コンペを10年余り続けたが、応募者の減少とコロナの影響で2年間休止していた。しかし、今年度復活できた。
 T市と共催で学生向けで保育園のアイデアコンペを行うとになった。優秀作品はそれをベースに実施設計されるから、かなり期待度が高い。

 現地説明会とかパネルディスカッションを開催すると、学生たちが集まってきた。その姿を見てほっとして嬉しくなった。今でもこんなに建築が好きな学生がいる。
 まだ暗い建築業界だけど、若い芽は着実に育っている。大人がやるべきこと、まだまだ多そうだ。

全国商工新聞 June 2022
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