地産地消
成田完二の 勝手にコラム   その他 001
 コンクリートが一般化する前の家には基礎が無く、石を置いてその上に建てている。「玉石基礎」とか「石ば建て」などと各地で呼び名は違うようだ。
 石は近くの川などから持って来たものだろうが、私の地域は半島で大きな川が無く、石が無い。荷重のかかる柱の下は、御影石を切った「切石」が主流で玉石基礎という呼び名には抵抗があった。
 床下の束石は片手で持てるほどで、束の方が太い位だ。伺ったところ、戦前まで回船業が盛んで東京などへ酒や瓦を運んだ船が帰りに積んできた石で、港に捨ててあったものを使ったらしい。
 それで謎が解けた。昭和40年代には束石はコンクリートで作っていた。その頃には港の石は無くなっていたのだ。
 
 基礎の石だけではない。地元で揃うものだけで家は造られていた。それはそれほどの昔の話しでも無いのだ。
 高度経済成長期には建材メーカーが力を付け、大工や工務店に営業を強力に推し進めてきた。売り出しには海外旅行が付いていたりしていた。
 気付けば地元の建具屋、表具屋、材木店まで無くなっていった。今では地元調達100%で家を建てることは困難になってしまった。
 
 現在の流通を否定するものではないが、せめて地元で眠っている材料を見直したいものだ。
 全国同じような家ではなく、地域性を持った家が復活していくことを望みたい。それこそが低炭素化に向かう一歩かもしれない。
全国商工新聞 2021.4
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