家がピザ窯状態?
成田完二の 勝手にコラム   eco 004
 青い空、白い雲、冷たいビール、そこに焼きたてのピザがあれば最高だ。石窯で焼いたパリッとしたヤツ。
 石窯といっても多くは耐火レンガで、外に石がデザインで貼ってある。燃料は薪、薪で直接ピザを焼くのではなく、窯内部の温度を上げるのが目的で、熱くなった窯内部表面からのふく射熱でピザは焼けるのだ。
 ふく射熱とは表面から放出される赤外線のこと。熱のあるもの全てから出ている。 人も例外ではなく、体格の良い人の近くに寄ると暖かいのは、その人から出ているふく射熱を感じるからである。美しい人の近くに寄ると体の中が熱くなるのはこれではない。

 建物の断熱計算は、家の中から外へ熱が逃げていく量を計算して性能を求める。
 冬ならそれだけで良いが、夏はそうはいかない。大親分の太陽ふく射と戦わないといけない。
 温度差だけなら熱伝導の計算で済むが、ふく射は赤外線、見えないし、計算も出来ない。僕ら町の設計士では経験と勘しか頼るものがない。
 親分の太陽ふく射は屋根や外壁の表面を焼き、子分を作る。子分たちは熱伝導と赤外線両方で家の中に攻め込んでくる。
 それを遮熱シートや断熱材で抵抗を謀るが、破れると天井面や内壁面が熱くなり、室内にふく射熱を放出してくる。これでは家の内部がピザ窯と同じだ。夏に帰宅して、部屋の中の全てのものが熱くなっているのはこの現象である。
 UA値やQ値などでは表せない夏の遮熱性能、ここまで制して家づくりの達人となるのか、先は長い。ピザとビールで頭を冷やそう。
全国商工新聞 Jun. 2023
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